歴史ぱびりよん > 映画評論 > 映画評論PART11 > パシフィック・ウォー USS Indianapolis: Men of Courage
制作:アメリカ
制作年度:2016年
監督:マリオ・バン・ピーブルズ
(あらすじ)
第二次大戦末期、アメリカ海軍巡洋艦インディアナポリス号は、本国からテニアン島まで、戦略物資(原爆)を輸送する任務に従事していた。
機密性の高い任務のため、護衛艦を付けない単独航海を強いられた同艦は、戦略物資の運搬には成功したものの、その帰途に日本海軍の潜水艦の攻撃を受けて撃沈されてしまう。3日後に救出されたとき、海に逃れたほとんどの生存者が、脱水症状とサメの襲撃によって亡くなっていた。
生還したマクベイ艦長(ニコラス・ケイジ)は、軍法会議にかけられるのだった。
(解説)
歴史に名高いインディアナポリス号の悲劇の映画化。これって、意外と有りそうで無かったんだよね。『ジョーズ』1作目の中で、この事件について詳しく語られるので、それなりに映画ファンの間では有名なエピソードであるのだが。
私は30年くらい前に、この事件に関するノンフィクションを読んで感銘を受けた。どうして映画化されないのだろう?と思い続けて、やっと今年になって鑑賞することが出来たのだった。
しかし、どういうわけか、異常にマイナー扱いの興業だった。東京では池袋サンシャイン劇場での単館上映で、しかも映画館にポスターも貼っていなかった。それ以前の話だが、映画雑誌などでもほとんど取り上げられておらず、TVやネットによる広告宣伝も皆無に近かった。私は、たまたま書店で立ち読みした雑誌『歴史群像』の紹介記事で、この映画の存在を知ったのである。そもそも、『パシフィック・ウォー』という邦題の付け方に、興業サイドのやる気のなさが見て取れる。上映期間もわずか2週間限定で、慌てて仕事帰りに駆け込んだ映画館はガラガラだった。
じゃあ、よっぽどの駄作かといえば、全くそんなことは無い。CGの予算が足りなかった感はあるが、ニコラス・ケイジやトム・サイズモア、それにトーマス・ジェーンなどのハリウッドの戦争映画常連俳優を揃えて、真面目にちゃんと戦争物語を作っていた。ハリウッド映画にしては、日本軍や日本人を好意的に描いているし。また、官僚機構の愚かさや無責任さ、マスメディアに煽られた大衆のヒステリー、戦争の虚しさや悲しさなども、説得力豊かに描かれていた。少なくとも、私は映画館で大満足だった。
それが、どうしてこんな不遇な扱いの興業だったのか?そこには、いったいどんな大人の事情があったのか、知りたいところである。
最後に一言。
アメリカ人って、人食いザメに襲われる映画が本当に大好きなんだね!