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制作:日本、キューバ
制作年度:2017年
監督:阪本順治
(あらすじ)
日系ボリビア人のフレディ前村ウルタード(オダギリジョー)は、医学を志してキューバに留学し、同地のキューバ革命政権に共感を寄せる。
やがて、祖国解放のためゲリラ兵となった彼は、チェ・ゲバラとともにボリビアに出征するのであった。
(解説)
阪本順治とオダギリジョー。すなわち、国際派の映画人が結集して作った映画。しかも、キューバとの合作映画である。
私はキューバを旅したことがあるのだが、日本とキューバでは文化がまったく違う。その溝を埋めるために相当な労力を要したはずなので、高いハードルを超えた監督以下スタッフとオダギリ氏には、心からの尊敬を捧げざるを得ない。また、オダギリ氏のボリビア訛りのスペイン語は非常に流ちょうだったので、相当な勉強と努力が窺えた(『シン・ゴジラ』の石原さとみとは大違いだね)。
ただし残念なことに、何を語りたい映画なのか最後まで分からなかった。物語のテーマ性を気にするタイプの観客は、間違いなく途中で退屈になるだろう。寝るだろう。
冒頭、チェ・ゲバラの広島訪問がかなり饒舌に語られる。しかし、このエピソードはどこにも繋がらないのである。ゲバラも、それ以降はあまり登場しなくなる。そして場面はキューバに移り、ボリビア人医学留学生たちの日常生活が淡々と語られる。主人公のフレディは、日系ボリビア人で、父の代から南米に移住しているので、日本のことを何も知らないし興味もない。つまり、日本とは物語がまったく繋がらなくなる。カストロやゲバラが、フレディとの会話の中で、日本について言及する場面さえ存在しない。どうやら、これは日本とキューバの関係について語りたい映画ではないらしい。・・・合作映画としては、そこが弱いな。
ただし、そういった面倒なことは考えないで、「フレディ前村青年の一生を描いたドキュメンタリー映画」として観れば、それなりに面白い。ハバナの街とかキューバの大自然を、映画館の大画面で見られるのは、なかなか良い体験だと思う。特に、私のようなキューバ愛好家にとっては。
また、ボリビア戦線でキューバ分遣隊を率いたホアキン隊長を演じたのが、名作『ゾンビ革命』で主役を演じたアレクシス・ビジェガスなのが嬉しかった。ゾンビの大群を翻弄したあの男が、ボリビア兵ごときに倒されるなんて!(悲)。わずかな出番だったけど、良い味を出してくれていたので大満足じゃ。