歴史ぱびりよん

冷戦

第二次世界大戦は、荒れ狂うナチスドイツと大日本帝国を、アメリカ合衆国を中心とした西側連合軍とソヴィエト連邦とが、挟み撃ちにして倒すことで決着しました。戦後は、そのまま両者が睨み合いに入ります。これが、「冷戦」です。

対立に至った理由はいくつも考えらますが、根本的な原因は、イデオロギーの相違(自由資本主義か社会主義か)も大きいのですが、それ以上に相互の不信感だろうと思います。

猜疑心の塊の男スターリンは、アメリカがソ連を総攻撃するものだと信じ込み、そこで北朝鮮や中国、東欧一帯にソ連の勢力圏を拡大しました。いざという時の防波堤を高く広くしたいという、ロシア人のいつもの戦略です。ところが、これはアメリカからすれば侵略にしか見えない。アメリカは、ソ連が世界征服を企んでいるものと誤解し、警戒と軍備を強化しました。これを見たソ連は、「やはり、アメリカは第三次大戦をやる気なんだ」と誤解し、こちらも軍備を強化するという悪循環です。

この結果、地球を何百回でも破壊できるほどの核兵器が地上に溢れました。ただ、それが抑止力となって、大国同士の大戦争が起きなくなったのが皮肉です。もっとも、キューバ危機(1962年)の際は、本当に核戦争が勃発して地球滅亡する寸前まで行ったわけですが。

いずれにせよ、今やロシアは、地球をアメリカと二分するほどのスーパーパワーに成り上がったのです。つい最近まで農奴制をやっていたアジア的後進国が、よくぞここまで成り上がったものですね。

とはいえ、社会主義政策の行き詰まりによって、その国力は次第に衰えていきました。

社会主義の世界では、経済政策や生産計画など全てを、共産党のエリート官僚が統制的に行います。共産主義社会を強制的に早期実現させるためには、そのやり方が良いと考えられたからです。そして民間人は、彼らの言うことをロボットのように聞いていれば良いのだし、聞くしかないのです。しかし、エリート官僚というのは、過去の成功体験を繰り返すことしか出来ないので、そこには創意工夫や進歩がありません。おまけに、机上の空論を振りかざして迷走します。こうして、非現実的な計画や指示に翻弄された民間人は、空しく右往左往するばかり。これでは、ロシア社会全体が士気低迷し、衰えていくのがむしろ当然でした。

さらには、「共産主義」実現の夢も、非現実的な妄想に過ぎなかったことが明らかになって行きました。かつてマルクスが憂いた労働者と資本家との対立は、革命ではなく、労働争議や政策によって簡単に解決されることが分かったのです。たとえば、西側諸国が掲げた「社会民主主義」は、自由主義体制の枠内で労働者の高福祉を達成していました。日本国は、今でも社会民主主義の優等生です。つまり、もはや頑張って「共産主義」を目指す意味が無くなったのです。

20世紀の終盤、「共産主義」という名のパラダイスは、後述するような様々な社会的実験の失敗もあって、完全に色あせて非現実的な夢想へと堕落していました。

1985年にソ連書記長になったミハイル・ゴルバチョフは、深まるロシア社会主義の混迷を是正するために、自由化政策に舵を切りました。しかし、これはパンドラの蓋を開けるような行為。ソヴィエト連邦とその属国は、一気に空中分解して崩壊したのでした(1989年)。

一個の夢想的なイデオロギーにしがみついて猛進していた国家の、妄想が解けた時の意外なもろさでした。

それでも、あのアメリカ合衆国と約50年にわたって地球を二分していた経験は、ロシア人の誇りとなっています。今でも、ソヴィエト連邦の栄光を懐かしむロシア人は多いのです。

プーチン大統領も、もちろんその一人ですね。