歴史ぱびりよん > 映画評論 > 映画評論 PART2 > モーターサイクル・ダイアリーズ The Motorcycle Diaries
制作;イギリス、アメリカ
制作年度;2004年
監督;ウォルター・サレス
DVDで見た。
キューバ革命の英雄チェ・ゲバラの自伝を元にしたロードムービーである。
舞台は、1952年のアルゼンチン。大学の医学部卒業を間近に迎えた23歳のエルネスト・ゲバラ(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、喘息持ちの体を家族に心配されながら、友人アルベルト(ロドリゴ・デ・ラ・セルナ)のバイクに同乗して南米大陸縦断の旅に出る。
無茶な運転がたたって、オンボロバイクは途中で大破。しかし、陽気な二人は、時には喧嘩をしながらも、ヒッチハイクで初志を貫徹しようとする。
『モーターサイクル・ダイアリーズ』という映画なのに、バイクに乗っているのは冒頭だけかよ(笑)。
様々な出会いと別れの中、二人は次第にこの世の実情に気づいていく。アルベルトは自らが志す医療の重大さを再認識する。そしてエルネストは、もっと大きな社会や政治の矛盾に目を向けていくのだった。
ストーリーは、いたって単純である。ロードムービーだけに、南米の雄大な自然が豊かに広がるし、インカのマチュピチュ遺跡も描かれる。こういうのは、本当は映画館の大画面で見たほうが良かったんだろうね。
印象的だったのは、二人の俳優の演技だ。最初は、世間知らずのお坊ちゃんで女のことしか考えていなかった二人が、次第に鋭い眼光を持つ背筋の張った人物に変貌していく様子が丹念に表現されるのだ。彼らは、苦しい冒険を経て子供から男へと成長したのである。
長期のしかも困難を伴う旅行は、人間の心と視野を大きく成長させる。まさに「可愛い子には旅をさせろ」だ。私の場合は、せいぜい一人でハンガリーの辺境を放浪した経験がある程度だが、それでもその旅行のおかげで随分と見識が広がったように思う。
若い人たちがこの映画に感動し「よし、自分も」と思ってくれたら嬉しい。
なお、この映画で若き日のゲバラを演じたガエル・ガルシアは、テレビドラマで壮年期のゲバラも演じているらしい。でも、あまりこちらは見たくないな。ガエルは、顔は確かに似ているけれど、どこか線が細い感じがして、実物のゲバラとは程遠い感じがするのだ。下手に実像が知られすぎているカリスマ的な人物は、そこら辺の若手俳優には演じるのに荷が重いのじゃないかと思う。