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歴史論説集

概説 ロシア史

総括

 我々現代人の多くは、インターネット全盛の世の中に住んでいるために、あらゆる情報が瞬時に万遍なく手に入り、あらゆる友情や共感や理解が、国境や人種や宗教を超えて簡単に得られるものだと思い込んで生きています。しかし、その思い込みは根本的に間違っています。錯覚ないし妄想にすぎません。

 インターネットは確かに便利かもしれないけれど、基本的に、その時の自分にとって心地よくて都合の良い情報しか落ちてこないように出来ています。つまり、もともと偏った情報と知識しか得られないツールなのであって、幅広い本物の知識を得られるわけではありません。キツい言い方をするなら、何もかも分かったような妄想に浸れるだけの、麻薬みたいな存在なのです。

 たとえば、ロシアのウクライナ侵攻は、突然始まったわけではありません。ウクライナ東部の係争地では、かなり昔から親ロシア派と反ロシアの戦いが日常化していました。今回の侵攻は、この争いの規模が大きくなっただけなのです。また、世界平和は、今回の侵攻で突然壊れたわけではありません。シリアやイエメンやアフガニスタン、ミャンマー、それに中央アフリカなどでは、悲惨な殺戮が毎日のように繰り返されています。あまり報道やネット記事にならないので、我々の意識の中で、何となく「無かったこと」にされていただけなのです。

 そう考えるなら、我々が何となく素晴らしいものだと捉えている経済のグローバル化やインターネットによる情報の均質化も、この世界を相互理解させて平和をもたらすためには力不足だったわけです。今回の戦争を防げなかった理由も、戦争勃発を知った自称知識人たちが意表を突かれて慌てふためいた理由も、偏った情報に甘んじて、何もかもすべて分かったような妄想に浸っていたからでしょう。

 われわれ日本人は、狭い島国の中で、偏ったマスコミ報道を浴びて何となく生きているので、アメリカや西欧が掲げる価値観である自由民主主義(日本人は、1945年からこの価値観の信者になった)を常識であり当然のように思っています。しかし、冷静になって考えてみれば、アメリカや日本やEUの人口をぜんぶ合計しても、全地球人類の2割弱なのです。残りの8割強はまったく違う価値観のもとに生きています。

 確かに、冷戦崩壊直後には、全地球がアメリカ型の価値観一色に染まったように見えました。アメリカ人や西欧人も、本気で世界征服したような気分になりました。しかし、それはあくまでも見せかけ、あるいは一過性の出来事に過ぎず、今では多くの国々が離反してしまったのです。ロシアも、もちろんそういった国の一つです。だから、ロシアのウクライナの侵攻に本気で衝撃を受けた人は、地球人口の2割弱に過ぎません。われわれは今や、地球のマイノリティなのです。それなのに、インターネットで流れる情報は、その大半をこの2割弱のマイノリティが独占しているので、それが価値観や常識の全てであるような錯覚が起きているのでした。

 我々の価値観が偏っている例をもっと挙げるなら、たとえばアメリカ合衆国が2003年以来イラクやアフガニスタンに仕掛けた戦争は、今回のロシアのウクライナ侵攻以上に筋が通らない残忍非道なものでした。20年近い長期に渡って多くの人々が殺戮され、多くの難民が生まれました。しかし、日本ではなぜか、アメリカの戦争については好意的な報道が主流で、中東地域の難民問題についても完全に無視されました。ところが、今回のロシアの戦争については、その残忍非道さばかりが強調され(もちろん、残忍非道であることは否定しませんが)、ウクライナ難民についても特別扱いで優遇されていますね。なぜアメリカによる戦争や虐殺は問題ないのに、ロシアが同じことをしたらダメなのでしょうか?非難するなら、両方を対象にするべきではないでしょうか?

 こういう偏った価値観や物の考え方や見方に、非常な危機感を覚えます。

 我々が正しく賢く生きるためには、本当の世界平和を成し遂げるためには、偏った物の見方に囚われるのではなく、2割弱でしかない狭い価値観を、努力して10割へと拡大していくことが大切なのではないでしょうか?

 人々がお互いを「識る」ために最も重要なのは、「歴史」だと思います。この機会に、もう一度歴史を満遍なく見直すことが大切ではないでしょうか?それも、インターネットで手近な知識を手に入れるのではなく、体系的な難しい情報群に挑戦して、自分自身の頭でしっかりと苦しくなるほどに考え抜くことが大切ではないでしょうか?

 この論文が、そのための一助となれば幸いです。

 

おわり

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