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歴史論説集

概説 チェコ史

第一話 チェコってどんな国?

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今日のチェコの国土(中央の赤)

 

 ヨーロッパの地図を開いたら、先入観を抜きにして、そのド真ん中を探してみましょう。何がありますか?丸い形の小さな国があるでしょう。それがチェコ共和国です。面積は北海道くらい。人口はわずかに1千万。主に、スラヴ系民族のチェコ人が住んでいます。首都はプラハ。公用語はチェコ語。通貨単位はコルナです。

 この小さな国は、つい最近の1993年までは、東隣のスロヴァキア共和国とくっついて、チェコスロヴァキア連邦共和国と名乗っていました。年配の方にとっては、この名前の方がしっくり来るかもしれません。

 昔のチェコスロヴァキアは、まるで西に向かって泳ぐオタマジャクシのような形をしていました。その頭の部分がチェコ、尻尾の部分がスロヴァキアに分かれたのです。彼らは、冗談半分に「円満に協議離婚したのだ」と言っています。そのとおり、対等の話し合いで、平和的に分立を成し遂げて、世界をあっと言わせましたね。

 チェコとスロヴァキアは、1918年までまったく違う国だったのです。その当時の世界情勢に対応するため、政略結婚したのでした。だからこそ、割り切って冷静に協議離婚できたのでしょう。

 スロヴァキアは、1918年まで「上部ハンガリー」と呼ばれていました。つまり、ハンガリーの一部だったのです。意外に思う人も多いでしょうけど、現在のスロヴァキアの首都ブラチスラバは、18世紀に至るまでハンガリーの首都でした。それほど、ハンガリーとの関係が深かったのです。このスロヴァキアは、ハンガリーが第一次大戦で敗戦国になったために、報復の意味もあって切り離され、戦勝国のチェコにくっつけられたのです。ただ、チェコ人とスロヴァキア人は、同じスラヴ系民族で、言語体系もそっくりなので、まんざら、愛のない結婚ではなかったのでしょうけどね。

 それでは、オタマジャクシの頭の部分、チェコはどんな国だったのか?実は、9世紀の建国以来、ずっと独立国だったのです。一時は、中欧を席巻するかの勢いを見せたこともあります。しかし、17世紀の三十年戦争に敗れてからはツキに見放され、周辺の大国の(実質的な)植民地に落ちぶれてしまいました。本当の意味での独立を取り戻したのは、つい最近の1989年になってからです。

 チェコ人は、歴史の中で極めて大きな苦難を味わってきました。苦労をしただけに、辛抱強くて計算高く、冷静な国民だと思われがちです。これは、恐らくそのとおりでしょう。ただ、一人当たりのビール消費量が世界一というお茶目な一面も持っています。

  それでも、国民はみな勤勉で向学心が強く、時間に正確です。まるで日本人みたい。だからこそ、ヨーロッパでもかなり早い時期に近代工業化を成し遂げ、旧共産圏の中でもピカイチの経済成長率を誇っているというわけですね。

  この国の名産は、なんといってもガラスです。ボヘミアガラスの美しいカットは、すでに13世紀から欧州諸国の垂涎の的でした。

  人形劇(マリオネット)やアニメの技術も素晴らしい。

  作曲家にはスメタナ、ドヴォルザーク、ヤナーチェク。作家にはカフカ、チャペック、クンデラ。画家はミュシャ。詩人はサイフェルト。文化偉人に恵まれた国でもあります。

 食べ物は肉料理がメインで、ドイツ料理の影響を強く受けています。内陸国のせいか、原則として淡水魚しか食べません。ただ、とにかくビールが旨い!多分、ビールは世界一でしょう。

 宗教については、基本はカトリックなのですが、多くの国民が無宗教になりつつあり、カトリック信者は今や国民の半数程度だとか。カトリックに次いで強力なのは、伝統的なフス派とチェコ兄弟団です。ただ、これらを信仰している人は、国民の1割程度だそうです。

 政体は共和制です。大統領と首相の下に議会があり、たいへん民主的な政治が行われているようです。チェコ人は政治に深い関心を持ち、かなり細かいチェックを入れてくるので、政治家のみなさんはたいへんでしょうね。

 以上、取りとめもなくチェコの名産や特徴について解説しましたが、これらについては、みな、歴史的に深い裏づけと理由があるのです。

 チェコは、ヨーロッパの中心に位置します。古くから東西南北の文化の交差点となり、さまざまな異文化の洗礼を受けました。また、そのために、ヨーロッパで起きた政治経済の大事件は、すべてこの小国に投影されてきたのです。

 ですから、小国と思って侮るなかれ!チェコの歴史を知ることは、すなわちヨーロッパの歴史を知ることに繋がるのです。

 さあ、これから知られざるヨーロッパ史を見に行きましょう!

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