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歴史論説集

概説 日露戦争

10.総括

(1)勝因と敗因

(2)その後の両国

(3)日本とロシア


 

(1) 勝因と敗因

  こうして日露戦争は日本の大勝利に終わりました。

  確かに、犠牲が多かった割には賠償金をもらえなかったし、得られた領土もわずかだったのですが、戦争目的を完全に達成したのだから、これは誰が何と言おうと大勝利だったのです。

  その勝因について検討しましょう。

  何と言っても、自分の長短を謙虚に分析し、「勝つため」に最も現実的で合理的な方策を打ったことが大きいでしょう。日本は、軍事のみならず外交や経済にも周到な配慮を行い、戦争を有利に早期終結させるために万全の措置を取りました。それは、自らの「弱さ」を良く自覚し、それを克服する道程だったのです。

  孫子いわく「彼を知り己を知れば、百戦して危うからず」です。

  ロシアの敗因は、まさにこれと表裏一体でした。彼は、日本を侮り、自らの実力を過信していました。そして、ひたすら戦場での勝利を追い求め、草の根の外交や諜報をおろそかにしていました。そのことが、国内での騒擾を招き、国際世論を敵に回し、諸外国から講和を勧告されるような政治状況を生んでしまったのです。

  これは、現在にも通じるたいへんに深い教訓だと思います。

 

 (2) その後の両国

   日露戦争の結果は、その後の日本とロシアの進路に極めて大きな影響を与えました。

  ロシアでは、皇帝の威信が大きく崩れ、やがて革命が起こります(1917年)。そして、新政府のレーニンやスターリンは、ロシアを強国に改造するために、社会主義政権のソビエト連邦を樹立したのです。やがてソ連は、工業力を増強させて日本に雪辱を果たし(1945年)、アメリカと世界を二分する大勢力に成長しました。ロシア人は、日露戦争の屈辱から多くを学び取ったのです。

  ところが日本は、これと逆の進路を辿ります。

  望外の大成功に増長したこの国では、軍閥が台頭し、そして過激な軍国主義に走ります。自らの能力を過信し、経済や外交や諜報を無視し、そして驚くべきことに、国境を接する全ての国に戦争を吹っかけるにいたるのです。まさに、日露戦争のときのロシア帝国とまったく同じ病状に嵌ったというわけです。

  日本が日露戦争で辛勝を勝ち得た戦略的理由は、西欧列強(英米)との外交協調であり、戦術的理由は、戦艦「三笠」に代表される近代兵器の威力でした。しかし、昭和の軍閥は、そのことを完全に忘れてしまいます。「かつてロシアに勝利した」という一事に有頂天となり、その原因分析を怠るようになったからです。その結果、役に立たない同盟をナチスドイツと交わし、資源の輸入元であるアメリカに戦争を挑むという愚を行い、さらには兵器の近代化を怠り人命軽視の精神論に逃げ込んだ。

  さらに恐ろしいのは、日露戦争の負の遺産を忘却した点でしょう。日本は、あの戦争でいくつもの過失を犯しています。旅順要塞への無謀な突撃や、陸軍と海軍との情報の分立、さらには戦場医療の軽視(あの戦争では、戦死者の数より病死者の数が多かった)。しかし、日本軍は「勝利」の栄光に幻惑されて、これらの過失を克服するための抜本的改善策を採ろうとしなかったのです。そのため、太平洋戦争では、この過失がより大きく深刻な姿となってこの国に悲劇をもたらすのでした。

  そして、日本は廃墟となりました(1945年)。

  「勝って兜の緒を締めよ」とは、当時の日本にこそ捧げるべき言葉でしょうか。

  こういったことに、歴史の教訓を読み取るべきだと思うのです。

 

 (3)日本とロシア

   日本とロシアは地勢的に見て、極めて因果関係の深い隣国同士です。

  しかし、今日の日本では、アメリカに占領されアメリカ文化に洗脳された時期が長かったため、マスコミも学者も実務家も、みんなアメリカばかり見ています。

  確かに、アメリカは資本主義の先進国ですから、経済面で参考に出来る部分が多いことは分かります。しかし、あそこは歴史の浅い深みに欠ける国ですから、文化面までべったりなのはいかがなものでしょうか?

  これまでの日本人は、戦後復興とか経済発展ばかりに気を取られ、この世界にもっと大切なことがあることを忘れてきました。だから、経済先進国のアメリカの尻ばかり追い掛け回しているのでしょう。でもこれは、昭和の軍閥が狂ったように戦争し、ナチスドイツの尻を追い回していたのと同レベルだと思いますね。日本人は、本質的には成長していないのです。

  ロシアは、日本とまったく異なる深い文化を持った国です。せっかく歴史の古いお隣同士なのだから、もっと互いの文化で刺激を与え合い、互いの価値を高めていくべき時期ではないでしょうか?(実は筆者はロシアびいきなのです)。

  この日露戦争論で、多くの若い人がそういう気持ちをもってくれたら嬉しいですね。もちろん、その前提として、「自虐史観」から脱皮しなければなりませんが。

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