歴史ぱびりよん > 歴史論説集 > 日本史関係 通説や学説とは異なる切り口です。 > 概説 太平洋戦争 > 第二十三話 総括
いよいよ総括に入ります。
まずは、「聖断」の後の状況から。
軍部は、クーデターを目論みました。彼らは、何が何でも既得権益を維持したかったのです。しかし、これに敢然と立ち向った人物がいます。陸相の阿南です。彼は、「わしを斬ってからにせい!」と叱咤し、若手強硬派を必死に抑えました。
玉音放送の前日、一部の少数の若手将校が皇居に乱入しようとして失敗するという事件が起こりましたが、その程度の暴発で済んだのは、全て阿南の功績でした。
その阿南は、8月15日の早朝に自決しました。彼は、愛する祖国を守り抜いて散ったのです。戦時中で、もっとも立派な軍人は、阿南だったのかもしれません。
その日は、玉音放送の日でした。天皇自らが、その声を国民に聞かせるというのは異例中の異例だったのですが、そうでもしないと不満分子が納得しないと考えられたのです。終戦直後の日本が、大した混乱も起こらずに済んだのは、玉音放送のお陰だったのかもしれません。
やがて進駐軍がやって来て、占領が始まりました。軍事裁判では、多くの要人や将兵が死刑になりました。これは、いわば見せしめです。報復であるのと同時に、他の日本人を免罪することで、その後の占領政策を円滑に進めようとしたのです。
アメリカの占領政策は、随分と寛容でした。そのため、多くの日本人はアメリカが大好きになりました。ただ、アメリカが日本に甘かったのは、政治的な理由があったからです。もちろん、冷戦です。ソ連の魔手から日本を防衛するためには、何よりもまず、日本をリッチにしなければなりませんでした。社会主義というのは、貧困から芽をふくからです。
こうして、急速な戦後復興と高度経済成長が始まりました。これは、日本人の努力というより、アメリカの政策の結果でした。この結果、日本は、会社人間が蔓延する仕事マシーンの国になりました。まあ、勝ち目の無い戦争をしまくるよりは、よっぽどマシというものです。
後の始末は、みなさまの想像にお任せしましょう! で、総括をやります。
①日本が第二次大戦に引き込まれた原因は、
(1)世界経済がブロック化されていたため、経済成長を阻害された日本は対外進出を図らざるを得なかった。
(2)アメリカの人種差別政策で移民を禁止されていたため、大陸に新天地を求めようという誘引が強まった。
(3)政党政治が崩壊し、また憲法の規程の不備から、軍部が暴走を始めた。
②第二次大戦が長期の激闘になった理由は、
(1)アメリカが、世界市場制覇の野望の実現の為に、戦争の規模を拡大し、長期化させた。
(2)当時の世界では、人種差別が一般的だったので、他民族に対する憎悪が激しく燃え上がった。
③日本が敗北した理由は、
(1)物的戦力及び技術力において、アメリカの足元にも及ばなかった。
(2)受験エリートが戦争指導をしたため、補給や情報を軽視するなど、初歩的な大チョンボを重ねまくった。
(3)基本的な戦略設計をしなかったため、行動が常に後手後手に回った。
(4)身内同士の庇い合いに狂奔し、失敗を「無かったこと」にした。
(5)お役所同士がセクト主義でいがみ合い、互いに足を引っ張った。
(6)戦争や外交を「ビジネス」としてシビアに捉えられなかったため、情勢判断が甘くなった。
(7)人命を軽視したため、有能な人材がたちまち枯渇した。
まあ、こんなところでしょうか? まだまだ、語り尽くせぬこともありますが、この辺でお開きにしたいと思います。
みなさんも、自分で本を読むなりしていろいろと考えてくださいね。
私の節分(鬼は外ーーー!)もとい拙文に長いこと付き合っていただき、本当にありがとうございました。