歴史ぱびりよん

はじめに

モスクワのクレムリン宮殿

 

2022年2月24日、ロシアがウクライナに軍事侵攻をしたことから、世界は新冷戦だとか第三次世界大戦の危機だとか騒ぎ始めています。

しかしながら、ロシアという国は、大昔より世界から精神的に孤立し、独特の歴史を歩み、しかも独特の世界観を抱いている国でした。すなわち、ロシアと他の世界との分断は、今に始まった問題ではないのです。だけど残念なことに、世界の識者たちは、この問題から意図的に目を背けて無視しようとしてきた傾向があります。

今回の戦争については、そういった世界の反知性主義的な態度こそが、勃発の原因の一つだと考えられるので、『歴史ぱびりよん』でこの問題に正面から切り込んでみたいと思い立った次第。

一方的にロシアを悪者呼ばわりして、プーチン大統領を狂人呼ばわりして非難糾弾することは容易だけど、それだけでは何の問題解決にも繋がりません。この機会に腰を据えて、じっくりと知識を整理して、この世界の本当の姿について考察を巡らせることが必要ではないでしょうか?

さて、世界地図を一望すれば分かるように、ロシアは世界最大の面積を誇る巨大な国家です。しかしながら、総人口は約1億4千万人で、日本とそんなに違いません。面積の割に人口が少ない理由は、その国土の中に、永久凍土に覆われたツンドラなどの寒冷地や、砂に覆われた荒地など、生活に適さない土地が多く含まれているからです。

とは言え、国土が広いために民族構成は多様で、いわゆる東スラブ人が大多数ですが、中央アジア系やトルコ、モンゴル系も多く、民族対立の問題にさらされています。

主要な宗教はキリスト教ですが、ロシア正教(東方正教とも)という独特の宗派を信じています。もちろん、国内にはイスラム教や仏教やユダヤ教を信仰している人々もそれなりにいるでしょうけど、かなりの少数派です。このロシア正教という独特の教派の存在が、ロシアのアイデンティティを、他の世界と隔絶させる大きな要因になっているように思えます。

その経済力は総体的に低調で、昔は主に穀物を、現代では天然ガスや石油などの地下資源を海外に輸出することで生計を立てています。国民の大多数は、貧しい農民などの地方生活者。それにもかかわらず、定期的に世界史をひっくり返す規模の大きな活躍をする不思議な個性を持った国ですね。

ロシア人の国民性を、誤解を恐れず一言で言い表すなら、「寒冷地に住む農民」です。日本では、東北地方に住んでいる人々がそれに近いと思うのですが、無口で朴訥で、表情をあまり変えません。ただし、心が冷たいということではなく、むしろ人情に厚い激情家だったりします。それに加えて、非常に辛抱強くて頑固です。国家権力や権威に対して従順です。

また、寒い土地柄でじっと巣ごもりをする時間が長いせいなのか、深い思索や芸術的錬成に長けている側面もあり、世界的な名作文学や管弦楽曲、バレエや絵画や映画といった芸術面で、目覚ましい業績を上げています。総合的な経済力は低調なくせに、科学技術や工業技術には侮れないものがあり、宇宙開発などは、世界の最先端を走っています。

ロシア料理も、ピロシキやボルシチやビーフストロガノフなどが世界的に有名ですが、農村から興った煮込み料理が中心で、寒冷地での長期保存が利くように工夫されたものが多いです。そこに、トルコなどの中東料理やフランス料理の影響を色濃く受けています。

そんなロシア国家は、歴史の全期間を通じて、強大な独裁的権力者(あるいは権力集団)に強権的に統治されて来ました。そして外の世界に対して極めて強い猜疑心を抱く、むしろ臆病な国柄です。そのようなロシア国家の性質こそが、今回のウクライナ侵攻をもたらした最大の原因だと考えられます。

どうしてロシアは、そのような国になってしまったのか?

知られざる歴史を探って行きましょう。