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映画評論

映画評論 PART9

ラスト・キング・オブ・スコットランド  The Last King of Scotland

制作:イギリス

制作年度:2006年

監督:ケビン・マクドナルド

 

(あらすじ)

 1971年、スコットランド出身の医学生ニコラス(ジェイムズ・マカヴォイ)は、後進国で一旗揚げようと思い立ち、単身アフリカ大陸のウガンダに渡った。

 高い野心はあっても理想を持たないニコラスは、僻地での不便な生活に次第に嫌気が差していくのだが、ひょんな偶然からイディ・アミン大統領(フォレスト・ウィテカー)の知己を得て、その主治医になる。

 カリスマ的な英雄大統領アミンに可愛がられたニコラスは、豪華な官邸で酒池肉林の毎日を楽しく過ごすのだが、外界では徐々に破局が迫っていた。

 アミンの本当の顔は、猜疑心の強い残虐非道な独裁者なのだった。

 それに気づいたニコラスは、身の危険を感じてウガンダを脱出しようと試みるのだが、時すでに遅かった。

 

(解説)

 「ホテル・ルワンダ」から始まったアフリカ映画ブームのころ、DVDレンタルで観た。

 かの有名な「ウガンダの食人鬼」アミンの暴虐をテーマにした映画。

 秀逸だと感じたのは、主人公に架空の白人青年を据えた上で、常にその視点から語らせる演出技法である。もちろん、これだと物語の舞台全体を俯瞰できないので、視聴者にそれなりの予備知識を要求することになる。また、劇中での視野狭窄を強いることになる。しかし、この映画ではその弱点が全てプラスに転じているのだ。

 主人公ニコラスは、気取り屋の白人優位主義者であり、酒と女に弱い享楽主義者である。演じたジェームズ・マカヴォイは、最近の「X-MEN」でもそうだが、そういう役をやらせると上手い。

 視野が狭く身勝手なこの人物が主人公で、しかも、彼の視点でしか物語が進行しないので、映画の前半はアミンの良い面ばかりが美化して語られる。そんなニコラスが、中盤から次第に真実に気づいていく様子は極上のサスペンスだし、それが一気に恐怖に転ずる瞬間は本当に恐ろしい。これは、あくまでニコラス視点で物語を構築したからこそ得られる演出効果であろう。

 ニコラスが味わう恐怖は、傲慢な白人青年の「自業自得」の面もある。これは、無意識のうちに後進国に差別意識を抱いている人々へのよい教訓となるだろう。そういう意味でも、「ラスト・キング・オブ・スコットランド」は、単なる娯楽映画の枠を飛び越えた名作なのである。

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