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映画評論

映画評論PART10

イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密 The Imitation Game

 

制作:アメリカ

制作年度:2014年

監督:モルテン・ティルドム

 

(あらすじ)

 第二次大戦中のヨーロッパ。

 イギリス政府は、ナチスドイツ軍の精緻な暗号「エニグマ」を破るべく、国内の数学者を総動員する。その中に、アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)の姿があった。

 有能だが、人間性に問題を抱える一匹狼のチューリングは、上司や仲間たちと深刻な対立を起こすのだが、天才的女学生ジョーン(キーラ・ナイトレイ)の助力を得て、ついに「エニグマ」の謎を解き明かし、そして第二次大戦をイギリスの勝利へと導いた。

 ところが、チューリングの功績は、軍事機密として戦後長い間秘匿されてしまう。それどころか、未成年を同性愛の対象にしていたため、政府から処罰を受けてしまう。その数年後の1954年に、不遇のうちに病死。

 それでも、チューリングこそが「コンピュータ」の基礎概念を樹立したという事実は、近年になって再評価されるのだった。

 

(解説)

 「新宿武蔵野館」に観に行った。

 実在した変人科学者を主人公にする物語は、創るのがなかなか難しい。

 なぜなら、歴史のリアリティを重視すると、人間的魅力に欠けた不愉快な奴が主人公になってしまうので物語全体が詰まらなくなる。それとは逆に、史実を捻じ曲げて魅力的なイケメンを主人公にしてしまうと、話が嘘っぽくなる。

 この間でバランスを取るのが、なかなか難しいのだ。

 その点、この映画はベネディクト・カンバーバッチを主役に抜擢した時点で、成功が半ばまで約束された。この人、いかにもアクが強く付き合いにくそうで、だけど不思議な魅力がある風貌をしている。つまり、彼の顔だけで、物語のバランスが取れてしまうのだ(笑)。

 また、劇中で描かれるイギリスの高官が、いかにも官僚的に腐敗した嫌な人々で、それが主人公の持つ不愉快な部分を相対的に薄味にしていた。それと同時に、そんなイギリス高官の嫌らしさこそが(=ナチスと戦っているからといって、決して正義の人々ではない)、映画に歴史的なリアリティと説得力を与えていた。

 そういうわけで、全体的に上手にバランスを取って、娯楽性とリアリティを両立させることに成功していた映画だと思う。

 ただし、唯一違和感を覚えたのが、ヒロインのジョーンの存在である。あんな若い美人が、数学者に交じって暗号解読の仕事なんかするかね?ジョーン・クラーク自体は実在の人だったようだが、キーラ・ナイトレイじゃないだろう?そこが、どうもせっかくのリアリティを損なっていたようで残念である。しかしながら、あれがブサイクちゃんだったなら、映画自体が詰まらなくなっていたような気もするし(笑)。

 ・・・何事も、バランスを取るのは難しい。

 ともあれ、「コンピュータ」の発明者であるアラン・チューリングが、その真の功績を認められ、女王から恩赦を与えられたのは、なんと2013年の暮れになってからだ。さすが、イギリスは保守的なお国柄であるな。

 この映画は、そんなチューリングを顕彰する目的で作られたので、その限りでは大成功した作品だったと言えるだろう。

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