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映画評論

映画評論PART10

密告者  Konfident

 

制作:チェコ、スロヴァキア、ポーランド

制作年度:2012年

監督:ユライ・ノヴォタ

 

(あらすじ)

 冷戦下、「正常化」時代のチェコスロヴァキア。

 アダム青年(イジー・マードル)は、秘密警察に雇われて盗聴やスパイの仕事をする。しかし、彼自身が監視の対象とされていることに気づき、疑心暗鬼に陥って行く。

 

(解説)

 「日本チェコ友好協会」の招待を受けて、広尾のチェコ大使館の映写室にて無料で観た。

 チェコでは大ヒットした映画なのだが、日本未公開なので、字幕スーパーは英語。しかも、Eavesdropping(盗聴)などの専門用語が多くて、よく分からないところがあったのが残念。でも、大使館の偉い人や、主演のイジー・マードルさんを交えた質疑応答コーナーもあって、たいへん贅沢な経験をさせて貰った。

 いわゆる「プラハの春」民主化運動(1968年)崩壊後のチェコスロヴァキアでは、「正常化」と呼ばれる共産主義勢力による反動が巻き起こった。

 主人公のアダム青年は、ひょんなことから旧知の秘密警察高官に目を付けられ、高給と脅迫(つまりアメとムチ)に頬を叩かれた結果、諜報員になってしまった。それからは、何の変哲もない市民の間を徘徊し、集音マイクで盗聴をする日々。

 「正常化」の異常さ(それ自体、矛盾した言い方だが)は、これだけではない。当局は、自分のスパイさえ信頼していないので、アダム青年の家にも盗聴器を仕掛けて、その私生活の全てを監視していたのだ。

 そして、一人歩きを始めた官僚システムは、無実の人を無理やり犯罪者に仕立て始める。

 良心の呵責に苦しみ、しかも周囲の誰も信用できなくなったアダムは、ついに西側への亡命を決意する。だが、それを成功させるためには、自分の周囲にいる全員を敵と見なして欺かねばならない。この判断は正解で、彼の亡命後に明らかになったのは、彼の周囲にいた人々は、恋人を除いて全員が当局のスパイだったことだ!

 チェコの人々は、現在でもかなり用心深くて疑い深い性格のようだが、この映画を観れば、「それも当然だ」と納得してしまう。

 なお、アダムを押さえつける秘密警察の高官役は、あのオンドジェイ・ヴィトヒィさんだった(=「コーリャ」の墓堀り役で、「ダークブルー」の主役の人)。いつも善人を演じている人にしては珍しく、私利私欲しか頭にないような腐敗官僚を演じていたのだけど、この人ってよく見ると悪人面なんだね(失礼!)。それを生かして、もっともっと、こういう悪役を演じてもらいたいところだ(笑)。

 ともあれ、こういった社会勉強になるような映画が日本で未公開というのは、とても残念なことである。

 ・・・アホウみたいなクソ映画は、やたら大手映画館で流れているけどね!

 

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