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映画評論

映画評論PART11

暁の7人  Operation Daybreak

 

制作:アメリカ

制作年度:1975

監督:ルイス・ギルバード

 

(あらすじ)

 1942年、ナチス占領下のチェコスロヴァキア。ヒトラーの片腕と呼ばれた辣腕の警察長官ラインハルト・ハイドリッヒが、総督として首都プラハに赴任した。

 彼を暗殺するため、イギリスに亡命していたチェコ人兵士たちが、落下傘を用いて空路から祖国に潜入する。同地のレジスタンスと力を合わせ、この襲撃作戦は成功に終わったものの、彼らを待ち構えていたのは凄惨な報復であった。

 

(解説)

 第二次大戦中に、チェコで起きた実際の事件の映画化。

 映画秘宝の特集雑誌『猛爆!戦争映画』で取り上げられていて興味を持ったので、Amazonを用いてDVDを購入。ところが、マイナーすぎてオンデマンド生産だったので、入手するまで数週間かかった。ここまでマイナーな扱いだと、いろいろ不安だったのだが、実際に観たら素晴らしい名作だった。なんで、こんな傑作が埋もれてしまっているのか、理解に苦しむ。

 監督のルイス・ギルバードは、中期の007監督として名を馳せた人なのだが、この映画では、荒唐無稽さや幼稚さと縁を切り、史実を淡々となるべく忠実に描く演出技法を用いている。撮影も、そのほとんどをプラハとその郊外で行っており、劇中の大きな出来事は、実際にその事件が起きたリアルな現場で撮影しているほどだ。この徹底した拘りには頭が下がる。

 また、人物の描き方も客観的で公平である。ハイドリッヒ総督はナチス高官ではあるが、妻子や友人を愛し、上司を敬い部下を慈しむ高潔な人物として描写される。そんな彼を、問答無用のテロ攻撃で暗殺する行為が、果たして正義なのかどうか。道徳に反するだけでなく、そもそも無意味だし、その後の報復を想定するなら、愚行なのではないか?こういった葛藤は、チェコ人レジスタンスの中でも描かれていて、しかし暗殺命令を受けた兵士たちが「命令だから」と割り切るところが、逆にリアルである。

 こういった葛藤を描いたからこそ、身内からの裏切りと密告に人間味と説得力が生まれるのだし、クライマックスにおけるレジスタンスの玉砕戦闘の悲劇性も浮き立つこととなる。そして、「戦争」という行為そのものの愚かしさが浮き上がる。そういう意味では、これを良質な「反戦映画」とも呼べるだろう。

 常々思うのだが、歴史物語というものは、余計な価値観や主観や小うるさいセリフを入れることなく、こういう調子で事実を淡々と積み重ねた方が、かえって感動や感慨を呼べるのである。それが分かっていない作家が、近年多すぎるような気がする。

 またこの映画では、寂れて空気が汚い冷戦期プラハの情景が、より一層物語を引き立たせてくれる。プラハの街の、今日とは違った魅力を感じさせてくれる点でも、良い映画だった。

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