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映画評論

映画評論PART11

小学校   Obecná škola

 

制作:チェコ

制作年度:1991

監督:ヤン・スビエラーク

 

 (あらすじ)

 物語の舞台は、第二次大戦の終戦直後。プラハ郊外に住む平凡な小学生の男の子エゴンは、一癖も二癖もある大人たちとの葛藤の中で、大人へと成長していくのだった。

 

(解説)

 これもまた、チェコ大使館での無料上映会で鑑賞した映画だ。『コーリャ愛のプラハ』が世界的ヒットとなる前の、スビエラーク親子の傑作。日本未公開作品で、DVDなども出ていないはずなので、チェコ大使館の招待には感謝感激である。

 いわゆる、少年の成長物語。主人公のモデルとなったのは、監督の実父の脚本家ズデニェク・スビエラークさん自身だと思われるが、なんだか描写が妙に生々しいのである。かなりの割合で、実際に起きた出来事が入っていると思われる。

 冒頭から様々な伏線が巧みに貼られ、それが次々に昇華されていく様子が楽しい。しかも、昇華のされ方がひたすら明るいのである。「これからのチェコには、ひたすら良いことしか待っていない」と言いたいくらいの勢いである。

 しかし、物語の舞台は194548年の3年間。これがミソである。チェコ人なら誰でも知っていることだが、1948年に共産党が暴力的なクーデターを起こした結果、それ以後40年間、この国はソ連配下の共産主義政権の下で、窒息しそうな国になる。つまり物語の舞台となった3年間は、チェコの20世紀の歴史の中で、例外的に多幸感に満ちていた極めてレアな時間なのである。その3年間を瑞々しく切り取った仕掛けの巧妙さを考えると、単なる少年の成長物とは言えなくなる。とんでもなく、奥行きと行間がある映画なのである。

 配役も、チェコ映画界の重鎮がゾロゾロ出てきて、まるで70年代の東宝オールスター映画を見ているようだった。エゴン少年の両親を演じるのは、いつものように脚本家兼務のズデニェク・スビエラークと、ベテラン女優のリブシェ・シャフランコヴァー。つまり、『コーリャ愛のプラハ』で疑似夫妻となったロウカとクララの2人組だ。風変わりな学校の先生フニーズトを演じたのが、オンドジェイ・ヴィトヒイ(『ダークブルー』の主演の人で、チェコ映画界の大スター)。そして、エゴン少年の隣家の主人は『この素晴らしき世界』で主役だったボレスラフ・ポリーフカ。などなど、重鎮たちが脇役で次々にまさかの登壇。そういうわけで、漫然と画面を見ているだけでワクワク感が半端なかった。

 もっとも、私のようなチェコマニアじゃないと、この感動は得られないのだろうなあ。

 ちなみに、フニーズト先生は、「レジスタンスの落下傘部隊の生き残り」という触れ込みで、いつも軍服姿で現れて、他の先生たちから尊敬されたり子供たちから人気者になったりする。ここでいう「落下傘部隊」とは、『暁の7人』や『エンスラポイド』で紹介したハイドリッヒ暗殺部隊のことだろう。しかし、この事件に関係したレジスタンスは、それぞれの項で説明したように一網打尽になっているのだから、フニーズトがその一員だったというのは眉唾である。もっとも日本でも、戦後すぐの頃は、素性の怪しい人たちがウヨウヨしていたわけだし、そういう人物が活躍するところも、この映画のリアリティの源泉であろうか。

 この傑作映画、日本でもいつかDVDにならないかなあ?

 

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