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映画評論

映画評論PART12

1944 / 独ソ・エストニア戦線  1944

制作:エストニア

制作年度:2015年

監督:エルモ・ニュカネン

 

(あらすじ)

 1944年のエストニアは、独ソ両軍の草刈り場と化していた。

 ドイツ軍エストニア人武装親衛隊に属するカール・タミク(カスパル・ヴェルベルグ)は、進撃してくるソ連軍をタンネンベルク線での塹壕戦で撃退し続ける勇士だったが、自分の両親と妹が1940年にソ連によってシベリア送りにされたのは、自らの不注意のせいだとの自責の念に苦しんでいた。彼は、その事実を打ち明ける手紙を、遺された唯一の家族である姉に宛てて書いた矢先に戦死してしまう。

 タミクを戦場で射殺したのは、ソ連軍小銃部隊に所属するエストニア兵ユーラ・ヨギ(クリスティアン・ウクスクラ)だった。彼は同胞の印象的な死に顔を忘れられず、死体から回収した手紙を持って首都タリンに住むタミクの姉アイノを訪れる。恋仲になる二人だったが、ヨギは彼女の弟を直接殺したのが自分だと打ち明けることが出来なかった。

 やがて、サーレマー島の戦いに出征したヨギは、ドイツ軍との激闘を生き延びたものの、上官であるソ連政治将校の残虐性に反発したため、戦場で射殺されてしまう。

 彼の懐には、真実を書いたアイノ宛ての手紙があった。

 

(解説)

 エストニア映画を、もう一本紹介。DVDで観た。

 エストニアはもともと小国だし、地勢学上の不利もあって、20世紀の前半を通してドイツとロシア(ソ連)に交互に占領されたり、あるいは一時的に独立を回復したりと、激しい政治的変転を繰り返した。個々の国民は、なすすべもなく振り回された挙句、この映画の2人の主人公のように、独ソ両軍に分かれて互いに殺し合うことにもなった。

 「前半の主人公が途中で死んで、彼を殺した人物が後半の主人公に入れ替わる」仕掛けには意表を突かれた。こんなストーリー、初めて見たぞ!しかし、「同じ言葉と故郷を持つ同胞同士が殺し合いを強要される」という理不尽を描く上では、実に見事なアイデアだったと思う。

 戦争映画としても、両軍の武装や塹壕戦術の史実的正確さ、そして実車T34(ロシアから借りたのかな?)をふんだんに使った戦車戦などあって、ミリタリーオタクも大満足必至であろう。そして、ナチスとソ連の政治的な恐ろしさも公平に描写されている。また、首都タリンの名所「のっぽのヘルマン」やサーレマー島の景観、独特の木造藁ぶき農家なども登場し、観光映画としてもさりげなく壺を押さえている。

 予備知識が無い人にとっては、少々ハードルが高いかもしれないが、エストニアの文化と歴史に興味がある人は必見であろう。

 ともあれ、総人口わずか100万人前後の小国エストニアは、IT技術のみならず、映画製作の世界でもハイレベルなのだった(この文章、前回の評論のコピペ(笑))。

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