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映画評論

映画評論PART12

1917 命をかけた伝令  1917

制作:イギリス、アメリカ

制作年度:2019年

監督:サム・メンデス

 

(あらすじ)

 1917年、第一次大戦における西部戦線。

 2人の若いイギリス兵トムとウィルは、上官から一刻を争う重要な伝令を言いつけられたため、ドイツ軍が待つ危険な戦場を敵前突破する。

 

(解説)

 新宿TOHOシネマズで、友人たちと観た。

 最近、ハリウッド系では、第一次大戦ものの映画が増えた気がする。第二次大戦とヒトラーは、ついに飽きられたのだろうか?(笑)

 この映画に対しては、事前に嫌な予感がしまくっていたのだが、案の定『フューリー』と同種の作品だった。すなわち、表面的で薄っぺらな歴史リアリティは出ているけど、内容は間違いだらけというパターン。作り手は、その問題に全く気付かずに真面目に造っているから、かえって観客に対して有害というやつ。

 そもそもイギリス軍上層部が、明らかに経験不足の新兵わずか2人に、期限タイトな危険まみれの伝令を任せるのが変である。普通は、さすがに古参将校を付けるとか、あるいは数波に分けて送るとかするはずだ。っていうか、1917年には飛行機が標準配備されているんだから、飛行機を差し向けて通信筒を落とせば済む話じゃないのか?劇中にも、ちゃんと飛行機が登場するわけだし。

 つまり、ストーリーの基本設定自体がおかしいのである。

 戦場風景も、一見するとリアルのようだが、なんだか両軍の位置関係がおかしい。ドイツ兵が、不自然な場所でゾンビみたいに1名とか2名で襲って来るのである。部隊行動という概念を知らないこのドイツ兵たちは、いったい何だったのだろうか?脱走兵とか取り残された負傷兵なら、まだ話は分かるのだが、だったら殺意をギンギンに燃やして主人公をガンガン殺しにかかるのは矛盾であろう。

 ボロボロになりながら、やっとたどり着いた目的地。ところが、伝令先の兵士たちは、歩哨を一人も立てずに教誨師の説教を熱心に聞いているので、主人公が来たことになかなか気づいてくれない。っていうか、主人公が敵だったら、あなたたち、奇襲食らって全滅してるよね?(笑)

 何だかんだで、ようやくこの方面の司令官に会えたけど、新兵の言う事だから、なかなか伝令内容を信用して貰えない。まあ、当たり前だよね。だから、「なんで下っ端を送るんだよ?」という話。

 その後景で展開されるイギリス軍の突撃シーン。「準備砲撃ゼロで煙幕もないピーカンの空の下、遮蔽物ゼロの平らな草原の上を、直立しながら喚声を上げつつ肩を並べてまっすぐ走る」歩兵たち。これって、自殺目的のバンザイ突撃じゃないかと思うのだが、ベネディクト・カンバーバッチ演ずる指揮官は、なぜか完勝を確信しているよ!

 結局、主人公の活躍で、突撃は途中で中止になるんだけど、あのまま突っ込んでいたら、わずか一丁の機関銃で一掃されて皆殺しだったね。イギリス軍って、戦争開始後3年も経過した1917年にもなって、そんなにバカだったのかね?

 また、彼らに向かって、いちおうはドイツ軍の砲弾が次々に飛んでくるのだけど、驚くほどに命中率が高いくせに、爆竹みたいな威力しかない。そういえば、毒ガスも全く出て来なかったな。

 とにかく、非常識なことだらけで、突っ込みどころ満載のアホ映画で、『フューリー』よりも酷いくらいだったのだけど、なぜかアカデミー賞作品である。確かに、カメラ長回しロングショット撮影は面白かったけどね。

 いずれにせよ、アメリカ&イギリス映画の劣化ぶりを、とことん思い知らされたのだった。

 似たようなタイトルながら、レベルが数十倍上の、エストニア映画『1944』の爪の垢を煎じて飲んだらいかがだろうか?

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