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映画評論

映画評論 PART1

グッバイレーニン Goodbye Lenin  

制作;ドイツ

制作年度;2003年

監督;ヴォルフガング・ベッガー

 

  最近のドイツ映画は、すごくハイレベルです。不景気の国では映画が発達すると言われていますが、まさにその通りなのかも。

 我が日本も、不景気ゆえか、アニメ映画やホラー映画が全世界で大絶賛。でも、ドラマや文芸作品の評価は大したことないから、ドイツに比べるとあまり自慢できることじゃないな。

 さて、「グッバイレーニン」は、1989年の冷戦の崩壊をテーマにしています。

 主人公は、東ドイツのアレックス青年。彼の母親は、狂信的な社会主義活動家です。しかし、彼女は不慮のことから心臓発作を起こして病院で昏睡状態になってしまいます。その間に、ホーネッカー議長が辞任してベルリンの壁が崩壊。東ドイツは西ドイツに吸収合併されて、急激な自由化と資本主義化に見舞われるのでした。

 そんな中、母親の意識が回復しました。しかし、心臓が非常に弱っているために「ショックを与えてはならない」と医者は言います。アレックスは、熱狂的な社会主義者の母親は、祖国が崩壊したことを知ったら死んでしまうと考えて、自宅の一室に軟禁して社会から隔離します。そして、東ドイツ時代のニュース放送をビデオで流すなどして、体制の崩壊を母親の目から隠し通そうとするのです。

 構造的には、コメディ映画ですね。しかし、あまり笑える箇所は多くありません。これは、ドイツ人のリアル志向の産物なのでしょうか?

 私が強い印象を受けたのは、東ドイツ人を主人公にすることで、資本主義の悪い面を観客に見せた点です。

 かつての東ドイツのエリートは、能力基準で選別されて急速に没落します。大学教授はアル中になり、労務者はプータローになります。彼らは、母親の病室に集まって「東ドイツごっこ」をすることで、失われたアイデンティティを懐かしみ、せめてもの幸せを見出そうとするのです。

 また、資本主義化は、モノとカネの価値を追求するばかりで、人間が生きるうえで本当に大切な「夢」を持ちません。東ドイツ人が、そうした渦中で葛藤する様子も、この映画は見せてくれます。

 そんな中でも、主人公アレックスは、賢く要領の良い人物なので、新たな体制にもすんなり順応し、恋人も得て元気に人生を歩んでいきます。そして、最期まで母親の「夢」を壊さないように懸命な努力を続けるのです。

 この映画は、「若者」の強さを賛美し、同時に、時代の激流の中でも決して色あせることのない「親子の情愛」を示すことで、極めて健康的で正統的な「人間賛歌」を謳っています。

 どんなに時代が変わっても、どんなに環境が異常でも、人間にとって本当に大切なのは「愛」なのだ。この映画を観た人は、きっと幸せに満ちた優しい心を抱きながら家路につくことでしょう。

 「グッバイレーニン」は、人の心を優しくさせる映画なのです。 最近、こういう映画が減っているので、実に貴重な作品だと思いました。

 どうして日本では、こういう映画が作られないのだろうか?

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