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映画評論

映画評論 PART2

キング・アーサー KING ARTHUR

制作;アメリカ

制作年度;2004年

監督;アントワン・フークワ

 

(1)あらすじ

 舞台は、紀元415年のイギリス。

 衰退期のローマ帝国は、ダキア(ルーマニア地方)の異民族の子弟を傭兵に仕立て、彼らにイングランドの防衛を委ねていた。兵役期間の満了を間近に控えた6人の傭兵を束ねるのは、ローマ人の血を引くアルトリウス将軍(クライヴ・オーウェン)である。

 イングランド在住のローマ人たちは、高まり行く異民族の圧力に脅え、次々に大陸へと撤退していく。アルトリウスと6人の戦士たちは、反抗的な原住民ウォード族や、海を渡って攻め込んでくるサクソン族の猛威から必死に同胞を守ろうとするが、ローマ貴族や聖職者の傲慢さと腐敗ぶりを前にして、自分たちの大義に疑問を感じ始めていた。

 ついにローマ貴族と対立したアルトリウスたちは、ローマのためではなくイギリスのために、侵略者サクソンと戦う決意をする。ウォード族と手を組んでサクソンを迎え撃ったアルトリウスは、多くの犠牲を払いながらも勝利し、ついにアーサー王として君臨するのだった。

 

(2)解説

 アーサー王伝説を、史実に忠実に映画化した初めての試みである。その意気を高く評価したい。

 歴史上のアーサーは、ローマ領ブリタニア(イギリス南部)に駐屯する騎兵将軍アルトリウスだったと言われている。彼は、侵入を繰り返す異民族との戦いに連戦連勝し、40年以上にわたってこの島に平和をもたらした英雄であった。その思い出が、後に中世の吟遊詩人の手によって、アーサー王と円卓の騎士、そしてキャメロット城の栄光や聖杯伝説へと姿を変えていったのだと言われている。

 映画のストーリーも、比較的良く練られていたと思う。アーサーを補佐した魔法使いのマーリンを原住民ウォードの族長という設定にして、グイネビアをその娘ということにして、彼女とアーサーの結婚を種族間の政略結婚だったことにするなど、「なかなか上手だな」と思った。ランスロットとグイネビアの不倫が描かれなかったのが物足りないが、まあ仕方ないだろう。

 映画に登場する「円卓の騎士」は6人。ランスロット、ガーウェン、トリスタン、ボールス、ダゴネット、ガラハッドである。それぞれ、なかなか個性豊かに描けていたと思う。伝説上の同名の人物とは、随分とキャラが変わってしまっていたが(笑)。

 ただ、非常に違和感を覚えたのは、アルトリウスの率いる人数がこの6名だけだという点である。6名は、士官であると同時に雑兵なのだ。つまりこの映画は、主人公を含めてわずか7名の戦士が敵の大軍と戦う物語なのである。いくらなんでも、それは有り得ないだろう!

 フークワ監督は、「黒澤明の『七人の侍』に憧れたから7名の騎士の活躍を描いたのだ」などとコメントしたらしいが、本気で言っているなら正気を疑う。『七人の侍』と『キング・アーサー』では、ストーリーの規模も戦場の大きさも段違いだからだ。戦闘シーンなどは、そういうわけで、非常に変てこなものとなっていた。

 どうやらこの映画は、ストーリーの規模の割には予算不足だったようだ。雑兵役のエキストラを十分に確保できなかった理由も、ここにあるのかもしれない。考えてみたら、主役クラスの俳優も無名の人ばかりだった。プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーは、「史実ベースのアーサー」が興業的に成功するという確信が持てなかったのだろうか。

 文化よりもカネを最優先するハリウッドシステムの問題点を、ここに垣間見たように思った。

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