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映画評論

映画評論 PART3

戦争と平和 第三部 1812年 ВОЙНА И МИР Ⅲ 1812

制作;ソ連

制作年度;1967年

監督;セルゲイ・ボンダルチュク

(1)あらすじ

 1812年6月、ナポレオン率いる60万の大軍がロシアに侵入を開始した。その圧倒的な威力を前に、バルクライ将軍のロシア軍は後退を繰り返すばかり。

 ナポレオンの大軍はスモレンスクに迫り、近くに住んでいたボルコンスキー老公爵(アンドレイの父)は、屈辱と悲しみに耐えかねて病没してしまう。

 ロシア帝国壊滅の危機を前に、ついにクツーゾフ将軍が立った。彼はモスクワ正面のボロジノ村に兵力を結集し、ナポレオンに決戦を挑まんとする。

 その兵力の中に、一個連隊を率いるアンドレイの姿があった。ナターシャとの恋に破れ父を失った彼は、絶望を胸に抱きつつも、打倒ナポレオンに命を燃やしていた。陣中見舞いに訪れたピエールと悲しい最後の交歓を交わすアンドレイ。

 ついに決戦が始まった。一進一退の大攻防戦の中、敵味方の勇士たちが次々に倒れていく。アンドレイの部隊は予備に回され、戦場を駆けることも出来ぬまま敵の砲撃にさらされた。やがて砲弾を受けて瀕死の重症を負ったアンドレイは、担ぎ込まれた野戦病院で、憎きアナトールが隣のベッドで苦しむ姿を直視する。達観した彼は、全ての者に「赦し」を与えようと、苦しい息の下で決意するのだった。

 ロシア軍は大健闘した。しかし、その損害はあまりにも大きかった。

 ボロジノの戦場は、無数の死体によって覆い尽くされていた。

(2)解説

 世界映画史上空前絶後の戦闘シーンが炸裂する一本である。

 なにしろ、現役のソ連軍兵士1万人をエキストラに使って戦闘シーンを撮影したのである。延々1時間にわたって描かれるボロジノの戦いは、とにかく「凄まじい」としか言いようがない。使用される火薬や馬匹のヴォリュームも、とにかくとんでもない!地平線の向こうでかすかに動く兵馬や硝煙や爆発が、絵でも人形でもCGでもなく全て本物なのだ。

 これこそ、採算性を完全に度外視できたソ連ならではの映画なのである。現代のデジタル技術濫用の薄っぺらさとは、とにかくレベルが違いすぎる。スペクタクルシーンが好きな人は、死ぬまでにぜひ一度見ておくべき映画だと断言できる。

 ただ単にカネをかけてあるだけではない。カメラワークやBGMの使い方、そしてトルストイの戦争批判やナポレオン非難のモノローグが効果的に用いられ、映画が単調になることを防いでいる。

 また、ナポレオンやクツーゾフの動きが、肖像画の中から立って歩き出したような雰囲気で描かれているのも良い。まるで、タイムマシンに乗って本物の歴史を見に来たかのようだ。

 第三部は、良くも悪くも、ほとんど戦闘シーンのために作られたような映画であるが、第一部、第二部、第三部と、物語が進むにつれてだんだん面白くなる仕掛けになっているから素晴らしい。

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