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映画評論

映画評論 PART3

シルミド 実尾島

制作;韓国

制作年度;2003年

監督;カン・ウソク

 

(あらすじ)

 1968年1月、北朝鮮の31名の特殊部隊が青瓦台(韓国大統領府)に奇襲攻撃を仕掛けた。この襲撃はからくも撃退できたのだが、恐怖にかられた大統領は「報復」を軍に命じた。すなわち、南からも特殊部隊を送り込み、金日成の暗殺を狙えというのだ。

 こうして、684特殊部隊が編成された。ヤクザや死刑囚から抜擢された31名は、仁川の沖に浮かぶ実尾島(シルミド)に隔離され、過酷な軍事訓練を受ける。彼らは、この任務に成功すれば過去の罪を全て赦され、祖国の英雄になれるものと思い込んでいた。

 犠牲者続出の過酷な6ヶ月の訓練の後、684特殊部隊は韓国最強の精鋭に生まれ変わっていた。しかし、いよいよ出撃となったその日に、作戦中止の命令が下った。複雑な国際情勢の中、韓国政府は北に対する軍事力行使を諦めざるを得なくなったからである。

 684特殊部隊は、その後2年以上もシルミドに隔離された。目的を失い精神が弛緩した隊員たちは、次第に上官に逆らったり、隣の島に抜け出して民間の女性をレイプしたりするようになった。この状況を苦慮したチェ教育隊長(アン・ソンギ)は、ソウルに対策を訴える。しかし、韓国政府が下した決定は、「684特殊部隊の抹殺」であった。もともと、韓国政府にとって「死刑囚やヤクザを中心にした特殊暗殺部隊」の存在は、国際世論上、極めて都合の悪いものであった。政府は、この理不尽な虐殺任務を、チェ隊長とその部下たちに命じたのである。

 煩悶したチェ隊長は、この情報を可愛がっていた隊員のカン・インチャン(ソル・ギョング)に漏らす。この結果、シルミド全土を舞台に、隊員たちと教官たちの悲惨な戦闘が展開された。チェ隊長はインチャンの眼前で拳銃自殺し、隊員たちは多くの仲間を失いながらも島を占拠した。しかしこの過程で、自分たちの戸籍が祖国でとっくに抹消されていることを知る。

 1971年8月。684部隊の生き残り24名は、せめて自分たちを絶望に追いやった張本人の顔を見て死のうと考えて、ソウルに上陸する。乗り合いバスをハイジャックした彼らが目指すのは、大統領府である。しかし、「共産ゲリラ」のレッテルを貼られた彼らを待っていたのは、軍と警察によって張られたバリケードと、情け容赦の無い銃撃であった。カン・インチャンやハン・サンピル(チョン・ジェヨン)らは、大破したバスの中で、互いに最後の名乗りを上げながら自決用の手榴弾のピンを引き抜くのだった。

 

(解説)

 実に重厚な悲劇である。

 684部隊編成のきっかけとなった1968年1月は、ちょうど私が生まれた時であるが、このような事件があったことはこの映画を見るまで知らなかった。

 冒頭は、北朝鮮特殊部隊の進撃と壊滅、そして主人公カン・インチャンがヤクザに身を落として刀で殺人を犯して逮捕される場面が交互に語られる。ここの編集があまり上手じゃなかったので、違う事件が同時平行に起こっていることを理解するまでに時間がかかった。こういうところが、韓国映画がまだまだ「荒削り」だと感じる部分である。

 しかし、その後の演出のテンポは実に良い。過酷な訓練の描写はちょっと大げさだったが、往年の日本のスポコン漫画みたいなノリで楽しめた。また、登場人物(そのほとんどが、坊主狩りの青年たち)の個性の書き分けが実に上手に出来ていたので心から感心した。彼ら訓練兵の中に葛藤があり、また彼らを教育する兵士たちの中にも葛藤があり、当然、訓練兵と教育兵の間にも葛藤がある。つまり、人間ドラマが多重構造になっていて、全体で玄妙なハーモニーを奏でていたのが実に良かった。

 物語の起承転結の組み上げ方も素晴らしい。せっかく訓練を終えて嵐の海の中を出撃したのに、中止命令を受けた上官たちに制止される場面は「前編終了」と言うべき見事な絵に仕上がっていた。その後の一転した弛緩ムード、それが抹殺命令によって狂気の殺戮に移行するテンポの取り方など、あまりにも完璧で文句の付けようがない。

 教育兵の中で、冷酷な鬼の教官であったチュ二曹(ホ・ジュノ)が最後まで訓練兵抹殺に反対したのに対して、温情的な教官だったはずのパク二曹(ネ・ジョンホン)がむしろ積極的に抹殺に賛成する場面が印象的だったが、人間社会なんて意外とこんなものである。このシーンは、非常に説得力があってリアリティを感じた。

 また、私はカン・インチャンを演じたソル・ギョングのファンなので、彼の味のある見事な演技を見られただけでも大満足だった。

 ただ、これはあくまでも「映画」なので、史実とは多くの点で隔たりがあるらしい。例えば、訓練兵が反乱を起こすきっかけとなった「抹殺命令」は、実際には出されなかったという説が有力である。大規模な官僚組織というのは、面倒な問題を「先送り」にするのが大好きだ。恐らくは、韓国軍もその例外では無かっただろう。684部隊をどう扱うべきか、書類を盥回しにして問題先送りを続けているうちに、疑心暗鬼と欲求不満にかられた訓練兵が、あのような暴発を起こしたというのが歴史の真実なのだろう。それでも、映画で語られる「抹殺命令」の描写に非常にリアリティがあったために、ストーリーが違和感なくスムーズに展開したのだから立派である。

 正直言って、私は日本映画より韓国映画のほうがレベルが高くて面白いと考えている。その最大の理由は、韓国映画は「語りたいテーマ」がしっかり備わっているのに対して、日本映画にはそれが存在しないからである。

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