歴史小説家 三浦伸昭の歴史ぱびりよん

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映画評論

映画評論 PART7

東京物語

制作;日本

制作年度;1953年

監督;小津安二郎

 

(1)あらすじ

 尾道で暮らす老夫婦、周吉(笠智衆)と妻とみ(東山千栄子)は、東京で暮らす子供たち夫婦に会うために上京する。

  しかし、長男も長女も、仕事と育児といった東京生活の忙しさゆえ、田舎の両親の来訪を迷惑がる。そんな彼らは、戦死した次男の未亡人・紀子(原節子)に両親の世話を押し付けた。しかし、心の優しい紀子は、老夫婦の東京滞在の面倒を懸命にみるのだった。

 

(2)解説

 今さら解説なんて、する必要あるのか? 言わずと知れた日本映画の最高傑作の一つであり、人情映画の至宝である。

 未見の人は、今すぐにでもDVDレンタルの店に行った方がよい。歴史をテーマに「していない」エンターテイメントとしては、文句のつけどころがない超絶的名作である。もはや、「神が宿っている」としか言いようがない。

 っていうか、歴史と関係ない映画なのに、どうして『歴史ぱびりよん』で取り上げるのかって?

  それは、この映画が放つメッセージが、当時の時代性を大きく反映させており、まさにそれこそが、『東京物語』を日本史上に轟く永遠の名画に押し上げているからである。

 物語のモチーフは、シェークスピアの『リア王』である。黒澤明も、後に『乱』で同じモチーフを取り上げることになるが、『東京物語』の方が、そのテーマ性を前面に出す上で成功している。

 尾道に住む老夫婦は、東京で生活している子供たち一家に会うのを楽しみにしていたのだが、子供たちや孫たちはそうでもない。東京と尾道では、生活のリズムがあまりにも違いすぎるからである。そこで、独身OLの紀子だけが、「どうせ暇だろう」ということで老夫婦の面倒を押し付けられるのだが、 いつも天女のように優しい紀子は、古き良き日本の最後の生き残りとして描かれる。

  この映画は、単なる人情映画ではない。ここに描かれるのは、古き良き日本の家族が、戦後復興や経済成長という美名の元に破壊されて行く恐怖の縮図なのだ。

 もはや人々は、カネ儲けや成功のためなら、道徳も人情も犠牲にすることだろう。親の葬儀でさえ、損得勘定で考えるようになることだろう。

 小津安二郎が1953年に危惧したことは、21世紀に入ってますます本格化している。非婚化晩婚化少子化などといった生易しい問題ではない。孤立死や孤独死はもちろん、家族内での虐待や殺し合いさえ当たり前の世の中に堕落してしまった。

  1953年という早い時点で、日本の未来に警鐘を鳴らした小津安二郎の先見の明の素晴らしさには脱帽する思いだが、その警鐘にまったく応えることが出来なかった我々の愚かさと不甲斐無さには断腸の思いである。

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