歴史ぱびりよん > 映画評論 > 映画評論 PART1 > 少女へジャル Hejar
制作;トルコ
制作年度;2001年
監督;ハンダン・イペクチ
2001年アカデミー外国語賞受賞作です。DVDで観たのですが、これがむちゃくちゃに良かった。
映画でこんなに涙腺が緩んだのは、生まれて初めて。
ストーリーは、割合と良くある異文化コミュニケーション物で、異民族の老人と子供の間に通う交感がテーマです。トルコ人のルファト判事(60代かな?)が、ひょんなことからクルド人の少女へジャル(5歳くらいかな?)を引き取って共同生活をしてしまう。
観ているうちに、「チェコ映画『コーリャ』のパクリじゃんか!」と思える場面が多いのですが、こっちはかなりハードです。なぜなら、トルコ人とクルド人は同じ国に住みながら、慢性的に殺し合っているからです。
哀しいのは、クルド人の少女は、外見はトルコ人と同じなのに、言葉がまったく通じないという点。老人と少女は、物語の終盤まで、言語によるコミュニケーションが全く出来ないのです。トルコ語は、ウラルアルタイ系で、モンゴル語の親戚です。クルド 語はセム語系で、ペルシャ語(イラン語)の親戚です。両者は、まったく別物なので、よほど心して勉強しないと互いに理解できないのです。
ルファト老人は、「ママに会いたい」と泣き叫ぶ少女へジャルのために、クルド人の難民キャンプを訪ね歩きます。その過程で、クルド難民がいかにひどい生活を強いられているかが赤裸々に語られます。 ルファトが、「我々の世代が不甲斐ないから、祖国は堕落してしまったのだ!」と義憤の涙を流すところがとても印象的です。トルコ本国で、上映禁止処分を食らった理由が分かるなあ。
結局、少女の家族は皆殺しにされていることが判明。そのことを、老人が少女に理解できないようトルコ語で伝える場面が泣かせます。
最後は、難民キャンプの老人が迎えに来て、ルファトとへジャルは涙の別れを迎えます。
・・・ほんとに、チェコ映画「コーリャ」に似てますが、受ける印象がまったく違います。そういうところに、民族の違いが感じられて楽しい。
チェコ映画は、ドライだけど楽天的。トルコ映画だと、すごくウェットで浪花節的です。むしろ、トルコ人の感性は日本人に近いかも。やはり、先祖が同じなんでしょうか?
ハードな民族問題を、こういう形でメディア化して世界に訴えるとは、トルコ人はなかなか侮れませんなあ。