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バルト・キングダム  Nameja Gredzens

制作:ラトビア

制作年度:2018年

監督:アイガース・グラウバ

 

(あらすじ)

13世紀のラトビア。ゼムガレ族は、大自然の中で伸びやかに暮らしていた。

しかし、ローマ教皇の庶子にして野心家のマックス(ジェームス・ブロアー)は、ゼムガレ族を滅ぼして自らがラトビア王になるために侵略軍を送り込む。

若きゼムガレ王ナメイ(エドヴィン・エンデレ)は、武力と知力、そして真心を駆使して巨大な侵略者を迎え撃つのだった。

 

(解説)

2019年の「EUフィルムデイズ」で鑑賞した。この映画祭は、普段見られないマイナーな国のマニアックな歴史映画を鑑賞できるからナイスなのである。こういう機会でもなければ、ラトビア映画なんか観られないぞ。

この映画は、要するに『ブレイブハート』のラトビア版なのだが、独特の文化的ギミックが楽しい。ゼムガレ族の独特の自然崇拝や謎の球技、衣装や儀式など、どれも興味深い。

そして、最重要アイテムとして登場する「ナメイ王の指輪」。この美しい造形の銀の指輪こそがゼムガレの王位継承の証なので、邪悪なマックスはひたすらこれを狙って来るのだ。それに気づいたナメイは、逆境に追い込まれた中の最後の決戦で、この指輪を逆手に取った奇想天外な戦術で逆襲を図る。この指輪はまた、ラトビアの伝説の名品になっているらしい。

正義感と道徳心の固まりのようなナメイ王は、まさに理想のヒーローとして活躍する。その配下の戦士たちは、「どこかのプロレスラー養成所から連れて来たのか?」と思うくらいに筋骨隆々の猛者ばかりで、ゼムガレ軍の白兵戦での異様な強さに説得力がある。マジに格好いいので、そんな彼らに惚れない女性は、地球上に存在しないだろうと断言できるぞ!

それに対するマックスは、まさに理想的(?)な悪役で、毒殺暗殺嘘ばら撒き人質に買収に、とにかく考え得るありとあらゆる悪いことを一本の映画の中でやってくれるので、その無茶苦茶な悪党ぶりが逆に心地よい。「教皇の血を引きながら、幼少のころから、よほど虐げられてきたんだな」と、彼が極悪人に成り下がった背景を同情できる余地があるのもナイスである。っていうか、この映画に登場するローマ教皇は、彼自身がサイコパスであるから、マックスが悪党になったのは遺伝なのかな?(苦笑)。

このように、正義と悪の書き分けがはっきりしているので、鑑賞後のすっきり感は、『ブレイブハート』より数倍上。勧善懲悪のさっぱりした物語で癒されたい方には、お勧めの映画です。ただし、白兵戦は結構、きつめの残酷シーンが多いので注意(笑)。

ナメイ王の死後、ラトビアは結局、キリスト教化されてしまうのだが、ラトビア人は今でも多神教の時代に憧憬を抱いているのだなあ。そういうことが分かるだけで、大きな価値がある映画だと思った。