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8月12日土曜日 コベントガーデン、リージェントパーク、帰国

今日は帰国する日だが、飛行機が午後4時発なので、随分と時間に余裕がある。

そこで、お土産屋めぐりに加えて、今まで回りきれなかったロンドン市内の名所を散策することにした。

まずはチェックアウトの手続きだ。手荷物をまとめてからフロントに行くと、インド系と思われる小柄な姉ちゃんに「追加料金」を請求された。何のことだか分からないものだから、「ふざけんな」と言い返した。部屋のシャワーが最後まで直らなかったのに、追加料金を取られるのは納得できない。でも、姉ちゃんの説明を落ち着いて聞くと、どうやら朝のバイキングで豪華版コースを選択したことによる追加料金だった。まあ、それなら仕方ない。毎朝、パンとコーヒーだけの食事が嫌なものだから、卵やベーコン付きのコースを選び、しかも部屋の入り口でルームナンバーを記帳していたのだから。でも、パンとコーヒー以外のものを食ったら有料になるなんて、マイ・ツアーの「朝食無料」という謳い文句はインチキだったのだな・・・。

釈然としないものを感じながら、荷物をフロントに預けると、我々は地下鉄の駅に向かった。

最初の目的地は、お土産屋がたくさんあるコベントガーデンだ。 コベントガーデンの地下鉄駅は、とてもユニークだった。地上に出る方法が、エレベーターしかないのである。降車した人がみんな、エレベーターの前に行列しちゃうのだから、満員混雑のときは、たいへんなことになりそうだ。

イギリスの地下鉄は、歴史がなまじ古いために、いろいろな無理をしたり試行錯誤をした跡があるのだが、もしかすると旅行者の立場からすれば、それが最大の魅力なのかもしれない。

地上に出た我々は、市場をブラブラしながら、ガイドに載っていた紅茶屋さんに入った。そこは、世界中のユニークな紅茶が総ぞろいしている店だったので、いろいろと買ってみたのだが、帰国してから飲んでみたところ、奇をてらいすぎていて意外とおいしくなかった。

次に、本屋さんに入った。そこでイギリス人の書いた「日本史」の本を見つけ、興味半分で買ったところ、レジの店員たちが「こいつ日本人だろう?」「なんで日本史の本を買うんだろう」「変なやつだね」などと、会計をしながら喋っているものだから面食らった。本人の前で噂話をするなよ!きっと、俺のことを「英語の出来ない人」だと思い込んでいたのだろうな。

そういう俺も、今後、外人の前で本人の悪口を日本語で言ってしまう機会があるかもしれないので、気をつけようと思った。

店を出た二人は、コベントガーデンに到着した。ここは、古くから雑貨市として栄えた場所である。映画「マイ・フェア・レディ」でも舞台になったところだ。弦楽四重奏のパフォーマーがヴィヴァルディを奏でていたり、子供たちがゲームに興じていたり、なかなか華やかで楽しい。

我々は、立ち去りがたい空気を感じつつ、ベンチに座ってしばしのんびりとした。

次の目的地は、オックスフォードスクエアだが、時間に余裕があるので、コベントガーデンから歩いていくことにした。なんとなく腹が空いたので、沿道にアバディーンステーキを見つけて腹ごしらえ。バンちゃんはローストビーフ、俺はサーモン(鮭)ステーキを注文したところ、ウエイターが新人だったのか、注文の取り方が下手糞で厨房で怒られていたのに苦笑した。でも、その甲斐あってか、料理は無事に出てきた。しかし、この鮭のマズいことマズいこと。だって、味がないんだもん!俺は、塩コショウをたっぷりとかけて、ようやくマトモな飯に変えた。

イギリス料理は、不思議なことに、味付けをまったく考慮しないのだ。まったく文化的じゃないんだなあ。

さて、腹いっぱいになったので、のんびりと散歩を楽しみつつオックスフォードスクエアに向かう。途中、ソーホー街をウロウロしたが、まだ昼間だったせいか、いかがわしい雰囲気はまったく感じなかった。

沿道でオバちゃんが共同募金を求めていたので、小銭を投げ込んだところ、「God Bless You」とお礼を言われて面食らった。俺は、この言葉を「風邪をひいたときの『お大事に』」という意味だとばかり思っていたのだが、ここでは言葉どおりの意味だったようだ。やはり、生きた英語に触れるのは違うなあ。学校教科書とは雲泥の差だなあ。

やがてオックスフォードスクエアに到着したが、ただの四叉路で面白いものは特にない。でも、近くに巨大な玩具屋さん(名前忘れた)があったので、そこに入ってみた。言っておくが、子供目当てじゃないぞ。・・・と言いつつも、子供がたくさんいて良かったんだけどなあ。俺はそこで、イギリス近衛兵の人形をいくつか買った。

さて、次の予定は、ベーカー街の「マダム・タッソー館」だ。歩いていこうと思っていたが、バンちゃんが苦悶の表情を浮かべて「タクシーにしよう」と言う。よくよく彼を観察すると、片足びっこを引いているではないか。靴を脱いでもらったところ、靴下に流血の跡が・・。そういえば、昨夜、足に豆が出来たとか言っていたな。その豆が潰れてしまったのか。 俺は昔から歩くことが大好きで、足の皮がムチャクチャに厚くて丈夫なのである。高校時代は、裸足で徒競走をしていたほどだ。また、数十キロを立て続けに歩いても疲労を感じることがない。でも、バンちゃんは普通の人だったから、数日間でこれほど長距離を歩いた経験がなかったのに違いないから、これは悪いことをした。

そこで、タクシーを拾ってベーカー街の入り口まで行ってもらった。しかし、「タッソー館」の前は、相変わらずの長蛇の列。俺は、行列に並ぶのが大嫌いな人間なので、今回の「タッソー館」行きは断念せざるを得なかった。

仕方ないので、ベーカー街北郊のリージェントパークで休むことにする。ホームズ博物館などを横目で観つつ、目的地に突入した。

そこは、異常に広大な円形の公園で、代々木公園に似た雰囲気の場所だ。北の外れには「サル山」が望見できるから、あそこが「ロンドン動物園」らしい。時間があれば行きたいところだったが、時間がないのでちょっと無理だろう。

俺は、この公園の芝生に仰向けになって空を見て過ごした。何度か、サッカー少年に顔を踏まれそうになったけどな。バンちゃんは、ベンチで本でも読んでいたようだ。

やがて、集合時間になったので、タクシーを使ってホテルに帰った。フロントで荷物を返してもらっていると、初日に知り合った日本人観光客たちがロビーに続々と集まって来て、やがて例の神経質な駐在員が現れた。彼女は「トラブルはなかったでしょうねえ?」と妙に心配そうだったので、俺は面倒くさくなって、シャワーの故障のことは言わなかった。

無事に全員集合していたので、バスに乗ってヒースロー空港へ。これでこのホテルともお別れだと思うと急に寂しくなった。グレート・ウェスタン・ロイヤル・ホテルは、何しろ古いけど、実に瀟洒で良い雰囲気だった。日本では、「新しいもの」ばかり持てはやして古いものを片端から壊してしまう傾向が強いけど、それは間違っているのではないだろうか?イギリスでは、古い建物に住んでいる人ほどグレードが高いと思われて尊敬されるらしいから、日本とは価値観がまったく違うのだな。

空港で添乗員と別れ、免税店でピーターラビットの絵皿を買い込み、大韓航空に乗り込んだ。後は、ひたすら眠るだけだ。

でも、隣に日本人の姉ちゃんが座ったので話しこんでしまった。この人はロンドンに美術の勉強をするために留学していて、これから帰国するところなのだそうな。バブルのころは、そういう姉ちゃんがたくさんいたんだよね。まあ、その人からいろいろとイギリスの裏事情を聞かされて勉強にはなったけどな。

いわく「ロンドンの地下鉄が緊急停止することが多いのは、アイルランドのテロを警戒しているため」「イギリス人は、任天堂をイタリアのメーカーだと思っているけれど、その理由は『スーパー・マリオ・ブラザース』とか、イタリア人の名前がついた商品を出すからだ」「イギリス人は、つい最近まで、日本を中国の一部だと思っていた」などなど。

やがて我々は、ソウルでのトランジットを経て成田に到着。留学姉ちゃんともそれっきりになった。別に、惜しいとは思わなかったけどな。俺は、「親のスネ齧り娘」が大嫌いなのだ。

バンちゃんとも、空港でお別れになった。なにしろ、お父さんとお母さんが、自家用車でお出迎えに来るんだもん。彼らの中に、ついでに俺を乗っけていくという発想はどうして出なかったのだろうか?

仕方ないので、俺は成田エクスプレスを使って一人で帰った。 それにしても、初めての海外旅行は実に楽しかった。自分の英語力にも自信が付いたしな。

次回の旅行は、バンちゃんが企画してくれるそうなので、それも楽しみだ。

けれど、我々が帰国してから数年後に、イギリスでは「狂牛病」騒動が持ち上がった。我々ってば、牛肉を食いまくったぞ。あれは大丈夫だったのかなあ?そろそろ発症の時期だから、顛末が楽しみだ(ひとごとみたいだね・・)。