歴史ぱびりよん > 映画評論 > 映画評論PART10 > ミスター・ベースボール Mr. Baseball
制作:アメリカ
制作年度:1992年
監督:フレッド・スケペシ
(あらすじ)
NYヤンキースの強打者ジャック・エリオット(トム・セレック)は、スランプ続きの上に不祥事を起こしたために、中日ドラゴンズに移籍せざるを得なくなる。
慣れない環境と日本文化に反発するジャックだったが、やがて内山監督(高倉健)やその娘との交歓を経て、心を開いて成長していく。
(解説)
これは歴史ものではないが、KANOを採り上げたついでに、野球つながりで紹介。
高倉健が活躍する映画なのに、あまり日本では話題にならない残念な作品である。健さんの訃報があった時も、テレビなどでほとんど紹介されていなかった。おそらく、共演のトム・セレックが、日本では無名の俳優だったせいだろう。アメリカ本国では、彼は当時のスター俳優だったのだが。
映画自体、なかなか良い出来だ。アメリカ映画にしては、日本人や日本文化を曲解している部分が少なくて、むしろ健さんが活躍するアメリカ映画としては、「ブラックレイン」なんかより、よっぽど日本の本質をよく分かっている作品だと思う。
典型的な「アメリカ人」であるジャックは、最初は日本人を見下してその文化を軽蔑している。しかし、次第にその良さに気づいて心を開くようになると、同僚のドラゴンズの選手たちも彼に好意を抱くようになる。そして、アメリカと日本はお互いの文化の長所を認め合い、それが相乗効果を起こしてチームを勝利に導くのだ。
これは、KANOと同様の普遍的なポジティブメッセージであろう。
地球人類がみんなそうなれば、この地球上に恐れるものは何も無くなるのだが。
個人的には、「ミスター・ベースボール」を、野球映画の最高傑作であり、同時に日米親善を描いた最高傑作だと思っている。