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チェ 28歳の革命 Che PartⅠ

制作;アメリカ、フランス、スペイン

制作年度;2008年

監督;スティーブン・ソダーバーク

 

チェ・ゲバラの著作「革命戦争回顧録」のダイジェスト版。

主なエピソードをぶつ切りにして、無理やりくっ付けた感じなので、原作を読んでいない人には辛いかもしれませんね。逆に、私のように原作を5回以上読んでいる人には、「中途半端」感が否めない。

種本の「革命戦争回顧録」は、ゲバラが戦闘中に書いた日記を、自ら戦後に集大成した内容なので、すごくリアルで生々しいです。それなのに、客観的で冷静な文体なのが、ゲバラという人の性質を現しているようでとても興味深い。ただ、気になるのは、「視野が狭いかな」と感じる点。たとえば、革命後に敵(アメリカ)に寝返った同志とか、ゲバラとソリが合わなかった人のことは、仮にその人が史実で大活躍したとしても、意図的にオミットするか悪く書く傾向があります。彼のこの「狭さ」こそが、彼を死地に追い込んだ最大の罠だったように思います。

そして、映画版は、これをそのまま映像化しているのだから、微妙に舌足らずなのは仕方ないのかな。

あと、予算不足なのか、大きな戦闘シーンはほとんどオミットされていました。クライマックス(のはず)の装甲列車撃破の場面も、かなりショボかった。史実では、「16両編成の完全武装の装甲列車」だったみたいですが、映画では「5両編成の普通の貨物列車」でした。予算が足りなかったのね(笑)。

そういえば、緒戦のアレグレア・デ・ピオの大敗のエピソードも、 シエラ山中でのバティスタ軍との最終決戦「夏季攻勢」も、全部オミットされていました。これじゃ、話が繋がらない。これほど、編集が下手くそな映画を見るのは、実に久し振りでした。

それでも、脇役の演技はなかなかでした。カストロ役の人なんか、本物そっくりだったし。アレイダ(ゲバラの恋人)役の人は、実物より可愛かったし。カミーロ・シエンフエゴスも、かなり似ていたなあ。

惜しむらくは、肝心の主演がミスキャストでした。ベニチオ・デル・トロって、ブサイクなだけじゃなくて、カリスマ性が無いですね。実際のゲバラって、イデオロギーかぶれの熱に浮かされたような感じが周囲の人々を惹きつけていたはずなのですが、この俳優からは、そういう要素が全く感じられなかった。・・・ただの ブサイクなオッサンでした。

もっと残念だったのが、「28歳の革命」がキューバで成功した理由が、ちゃんと描かれていなかったこと。

映画には全く出てこなかったけど、あれはカストロが、アメリカのマスメディアを抱き込んで、全世界レベルで反バティスタ宣伝をやった成果なんですよ。アメリカの世界的メディアが味方に回れば、それがキューバの庶民にも影響力を持つので、バティスタ独裁政権は文字通り全世界から孤立し、宗主国アメリカからも見放され、こうして自滅したのでした。

カストロは、当時30歳でこれをやったのだから、やはり彼は天才だったのだ!  ただ、ゲバラ自身は、大嫌いなアメリカと手を組むような戦略にはいっさい反対で、カストロのこのメディア戦略に否定的だったんですな。だから、映画にメディア戦略のことが描かれなかったのかもしれないけど、ゲバラのこの偏狭さ(くそ真面目さ)が、彼を39歳で敗死に追いやった決定的要因だと思うので、やはり描いた方が良かったように思います。じゃないと、続編との対比が上手くいかないので。 ・・・案の定、まったく上手くいきませんでしたね。