歴史ぱびりよん

RRR  

制作:インド

制作年度:2022年

監督:S・S・ラージャマウリ

 

(あらすじ)

1920年、イギリス統治下のインド。宗主国イギリスの貴族が遊び半分で誘拐した妹を救出するため、森林の民ゴーンド族の勇士ビーム(N・T・ラーマ・ラオJr.)は都市へと旅立つ。

そこで待ち受けていたのは、ビームとは別の目的を抱いてイギリス軍に潜入していた青年ラーマ(ラーム・チャラン)であった。

 

(解説)

なぜか、日本で大ヒットしたインドの大活劇映画。

ラージャマウリ監督は、人間とハエが恋を巡って死闘を繰り広げる、謎のアクション映画『マッキー』を撮った人だ。インドでは大人気の監督なのだが、私は彼の作品とは『マッキー』以来10年ぶりの再会だった。日本の映画館は、もっとインド映画を公開するべきではなかろうか?

タイトルの『RRR』は、Rise(蜂起)、Roar(咆哮)、Revolt(反乱)という意味らしい。

インドでは、最近はナショナリズムが盛んらしく、RRRは旧宗主国イギリスとの戦いがテーマになっている。劇中で殺されるイギリス兵は、たぶん1,000人じゃ利かないだろう(苦笑)。とにかく、この映画で描かれるイギリス人は、極端な人種差別主義者で、インド人を虫けらのように扱う極悪非道の人非人である。とはいえ、誘拐した少女を、それなりに可愛がって衣食住も与えていたようだから(歌が上手というだけの理由で誘拐するのも、どうかと思うけど)、そのせいで皆殺しにされるのは可哀想な気もするが。

超人的な戦闘力を持つ2人の主人公が、友情を育んだり敵対関係になったり、また友情を結んだりしながら、巨大なイギリス帝国を相手に大暴れする。

ラージャマウリ監督は、イギリスやイギリス人に個人的な偏見や憎しみを抱いているわけではなくて、作劇上、全盛期のイギリス帝国を悪役にしないと、敵を強く設定出来ず面白いアクション映画を作れないものだから、そうしたようにも見える。かつてのハリウッド映画で、巨大な敵役の定番が、ナチスかソ連だったのと同じことである。

今の世の中は、現実世界に小粒な政治勢力が多極化しすぎた上に、コンプライアンスやポリコレがうるさくなり過ぎて、物語世界の上でも巨大な敵や絶対悪を設定しにくくなってしまった。ハリウッドも、1980年代のように派手なアクション映画を作らなくなった。ヒトラーのような大物の悪党は、想像することさえ出来なくなってしまった。

そんな中で、『RRR』が日本で異例の大ヒットをした理由は、久しぶりに、難しいことを何も考えずに楽しめるような、巨悪を相手取った勧善懲悪のアクション映画だったからかもしれないね。

現実世界が詰まらなくなると、映画の世界も詰まらなくなってしまうのだった。

とはいえ、最近のインドでは、こういった反英的なコンテンツが増えているようで、それはそれで心配だ。昨今のこの世界の分断を、象徴しているようでもある。