歴史ぱびりよん > 映画評論 > 映画評論 PART13 > SNS-少女たちの10日間 V-siti
制作:チェコ
制作年度:2020年
監督:ヴィート・クルサク、バルボラ・チャルポヴァー
(あらすじ)
ノンフィクションのドキュメンタリー映画。
映画会社と知識人たちが、SNSなどのインターネットを用いた性犯罪の実態を暴くため、特設スタジオに童顔の3人の女優を呼び集め、それぞれ12歳と偽らせて、出会い系サイトに写真を投稿させた。
たちまち群がるロリコンおじさんたち。
(解説)
またもやチェコ映画。
この映画評論コーナーに、チェコや東欧の映画が多くなってしまう理由は、著者の個人的趣味ももちろん有るのだが、この地域の作品レベルが実際に高いからである。ただ、中東欧の映画は、ハリウッド製などと違ってなかなか映画館のスポンサーが付かず、日本ではミニシアターでの期間限定上映になることが多いのが残念である。とはいえ、このドキュメンタリー映画は、新宿武蔵野館でやってくれたので、まだ鑑賞に便利ではあったのだが。
さて、大胆な社会的実験である。3人のにせ少女が、自らの姿態の写真をSNSに投稿したところ、瞬く間にいろいろなオジサンがチャットで声を掛けて来る。オジサンたちは、最初のうちは優しく世間話をするのだが、次第にあの手この手で少女を裸にしようとする。そして多くの場合、少女に裸の写真を投稿させてこれを人質にし、「親や学校に言いつけるぞ!それが嫌なら、俺様と会ってエッチさせろ!」と恫喝モードに入るのだ。
とにかく、オジサンたちがキモい。にせ少女との画面越しのチャット中に、イチモツを出してしごき始めるデブがザラにいて、それが映画館の大スクリーンに映るものだから(さすがに日本版にはボカシが入るが)、周囲の女性の観客はみんな吐きそうになっていた(笑)。
少女を演じた3人の女優たちは、体力よりもメンタルを激しく削られて、休憩時間は顔面蒼白で息も絶え絶えになっていた。
劇中に登場する心理学者によると、オジサンたちがそのような振る舞いに出る理由は、性欲よりもむしろ支配欲とのこと。自分よりも弱い存在をいたぶることで、自らの偉大さの妄想に浸れるというわけだ。
映画スタッフが、チャットの映像から変態オジサンの素性を解析してみたところ、昼間は真面目な仕事をしている人が多く、学童キャンプの管理人とか学校の先生のように子供たちと日常的に接しているような人もいることが判明。多くの人々を恐怖させるのだった。
とにかく、下手なホラーよりも恐ろしい映画である。本国チェコでは、子供向けに一部修正して(当然、イチモツ露出シーンは削るだろうな)、学校教材にしているらしい。確かに、この恐ろしい映画を観れば、SNSにうっかり近づく子供は減るだろう。しかし、子供が確信犯的に金銭目的で体を売るような状況が起きたなら、もはや防ぎようがない。
ちなみに、この映画のお陰で、実際の悪質性犯罪者が特定されて逮捕に繋がったことから、スタッフ一同、チェコ警察から表彰されたらしい。
日本でも同じ問題が起きているはずだが、なぜか「パパ活」などという言葉に変換されて小さく扱われている。パパというと、足長オジサンのような慈善家の紳士が連想されるので、「変態オジサンによる少女レイプ」という事態の深刻さが伝わらなくなる。これは、日本人の悪癖であるところの、「言葉の言いかえによって問題の本質を隠蔽する」手法の一つであろう。退却を転進、全滅を玉砕などと言い換えても、80年前の戦局を変えることは出来なかったのに。
我が国は、子供たちの未来を深刻に脅かす社会問題に対し、逃げずに勇敢に戦っているチェコを少しは見習うべきであろう。
読者の中には、「お前が言うな!」と思う人も一定数いそうな気がするけど、私のロリコンは性欲を伴わないプラトニックなものだから、この映画に出て来るような変態とは訳が違うのだ!本当だよ、嘘じゃないよ。げへげへげへ。